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 シナファイ 〜3つの視点から〜
                    創刊号    2003.7.28
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■□■ [創刊によせて]

  まったく違う3つの音から1つの和音ができるように、ある共通 
 のテーマについて、まったく違う3人がそれぞれの視点から書くこ 
 とで、それぞれの視点とは異なる、新しい視点を生み出すこのがで 
 きるのではないか------そんな突拍子もないアイデアを、ようやく 
 ここに形にすることができました。

  タイトルの "シナファイ" は、現代音楽の巨匠クセナキスが作曲 
 した、伝説的なピアノ曲からとりました。モーレツな不協和音の連
 続なのに、それでいてひとつひとつの音が奇妙に調和して、いちど
 耳にすると忘れないほどの強烈な印象を残す、奇想天外で摩訶不思
 議な曲です。

  ときには和音を、そしてときには不協和音をたてる3人の視点。 
 このメールマガジンがめざすのは、ずばり文章による "シナファイ"
 です。どうぞお楽しみに!

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 今月のテーマ:
             [ 映画 ]         
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■□■ [「マトリックス」の世界を読み解く!]
□ □
■□■                       あがた
 
  映画「マトリックス・リローデッド」の人気があいかわらず根強
 い[1]。ただ話がやや複雑に入り組んでいるせいか、前作とは違って
 見た人の感想は賛否両論のようだ。さて私はというと、はっきり言
 って見た直後は、すべてが斬新だった前作に比べるとちょっとイマ
 イチだなぁ、と、やや不満だった。とくに地下都市ザイオンの場面
 にはウンザリさせられた。モーフィアスの演説はどうしようもない
 くらいに内容空疎だし、その直後のダンスシーン---まるで老人や子
 供は存在しないかのようなバカ騒ぎ---は安っぽいMTVのようだし、
 トリニティとのラブシーン直後のネオはまるで関根勤みたいだし(
 ←あんまり関係ないけど・・・)。そして見終わったあと、ウワサ
 どおり見てもナンノコッチャラよくわからない謎な場面がいくつも、
 ぼんやりと心のなかに残った。そして思った。「次回作で完結って
 いうけど、いったいどうやってこの話を完結させるつもりなんだ!
 ?」
 
  いちばん単純なのは、「マトリックスもザイオンも、すべてはネ
 オの見た夢でした、チャンチャン♪」とやってしまうこと。いわゆ
 る "夢オチ" というヤツですが、でもこれだとあまりにも面白くな
 い。あるいはマトリックスは、実はロシアのマトローシュカ人形み
 たいな "入れ子" 構造になっていて、ザイオンも実は第二の仮想現
 実世界で、リアル世界はさらに別にある、と解釈することもできそ
 うですが、これも所詮は "夢オチ" の変形版。ここまで大々的な映
 画を2本も作っておいて、こんなヘッポコなストーリーをやったの
 では、あまりにも客をバカにしてる。というわけで、これもどうも
 あり得そうにない。
 
  じゃあ、どうなるんだろう、と、改めてゆっくり考えてみると、
 このマトリックスのストーリー、考えれば考えるほど、実は哲学的
 に深い問いかけをしているかもしれないということに気がついた。
 
  マトリックス・リローデッドのなかで、私がいちばん気になった
 のが、映画の最後。現実世界のなかでイカ型ロボットに攻撃された
 とき、なぜネオは手をかざすだけでロボットを止めることができた
 のか---まるでマトリックスの中で弾丸を止めたように---、という
 点です。マトリックスという映画が、 "夢オチ" といった姑息なテ
 を使わないとすると、以下のようにいくつかの解釈ができそうです。
 
 |解釈その1:
 | ネオはマトリックスの世界では超能力者のように何でも出来る。
 |そこでイカ型ロボットに襲われた際、まずマトリックスの世界に
 |影響を加えて、間接的に実世界のロボットに影響を与えた。
 
  しかしこのとき、ネオはプラグに繋がれていない(=マトリック
 スに繋がれていない)という単純な理由から、これは成り立たなさ
 そうです(ネオは、実は念力でマトリックスに影響を与えられるよ
 うになっちゃった、なんてブッ飛んだストーリー展開にしてしまう
 なら別ですが・・・)。
 
 |解釈その2:
 | ネオは実世界でも超能力者になっちゃった。
 
  さすがにこれはないだろうけど、なんとあの "Newsweek" 誌に、
 こんな予想が載ってました。もうちょっとマシな映画評者はおらん
 のかぃな・・・。
 
 |解釈その3:
 | ザイオンもマトリックスも、どちらも同じくらいに "リアルな" 
 |世界で、どちらが現実でどちらが仮想現実かということは、そも
 |そも論理的には決定不能。マトリックスの世界にもザイオン的性
 |質(物理法則)が含まれているように、ザイオンの世界にもマト
 |リックス的性質が含まれている。そのことを悟ったために、手を
 |かざすことでロボットを止められた。
 
  2000年以上も昔の、中国の古代哲学書「荘子」[2]のなかに、こん
 な話があります。荘子があるとき、蝶になった夢を見た。夢の中で、
 あちらこちらと、ひらひらと気持ちよく飛んでいた。ふと夢から覚
 めると、もとのままの自分だった。そして荘子はこう考えた。「こ
 れは一体、自分が蝶になる夢を見ていたのだろうか? それとも自
 分は本当は、人間になる夢を見ている蝶なのだろうか??」、と。
 
  もし私が脚本家だったら、こういう結末にするだろうなぁ、と思
 ったのが、この解釈です。マトリックスの世界にもザイオン的性質
 があり、ザイオンの世界にもマトリックス的性質がある、あたかも
 陰と陽が交差する、タオのマーク(太極図)[3]こそが、この世界の
 本当の姿なんだよ、と。私が先に「実は哲学的に深い問いかけをし
 ているかもしれない」と書いたのは、こういう理由からです。
 
  でももし私が、さらに飛びッきりに腕のいい脚本化だったら、こ
 んなストーリーにするだろうなぁ、というのが、さらに大胆な次の
 解釈。
 
 |解釈その4:
 | 問題の場面の前に、マトリックスの設計者とネオが対話する場
 |面があるが、じつは「マトリックス・リローデッド」では、あの
 |対話から後のシーンは、すべて設計者の作成した仮想現実世界の
 |中で起こったことだった・・・!
 
  つまり設計者との対話の後、ネオはトリニティを救ってマトリッ
 クスから現実世界に抜け出したと思っていたが、実はまだマトリッ
 クスの中だった。しかしイカ型ロボットに襲われたときになにか違
 和感を感じ、ここが現実世界でないことを知った、という解釈です。
 
  これもまた、「リアルとは何か」という深い哲学的な問いにつな
 がるストーリー展開で、とても興味深いのですが、ただ唯一の難点
 は、ここまでくるとストーリーが入り組みすぎて、ヘタをすると何
 が何だかワケがわからなくなってしまうこと。続編はぜひ、そうな
 らないことを祈るばかりです。

  いずれにしても、飛びっきりに現代的な映画なのに、考えれば考
 えるほど、飛びっきりに古い思想的テーマに繋がるというあたりが
 とても面白い。

 | この世界は根源神ヴィシュヌの見る夢であり、ヴィシュヌがま
 |ばたきする間に、一つの世界が生まれて消える。もう一度まばた
 |きをする間に、次の世界が生まれては消える。無数の世界が次か
 |ら次へと生まれては消えてゆく。(古代インドの思想より[4])

 | 我々を夢みる夢がある。(カラハリブッシュマンの言葉{1})

              × × × 
 
  私は、インターネットの最大のメリットは、クリックひとつで関
 連する情報に、すぐにアクセスできることにあると思ってます。そ
 んなわけで、私のコラムは、これを読んでくれた皆さんが、ここを
 最初の取っ掛かりにして、リンクをたどってさらに遠くへ進めるよ
 うな、そんなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
 
 【関連リンク】
 [1] マトリックス・リローデッド
     http://whatisthematrix.warnerbros.com/
 
 [2] 荘子
     http://www.cam.hi-ho.ne.jp/h_sakamoto/thought/soshi.htm

 [3] 陰陽五行説について
     http://homepage2.nifty.com/raku-design/5shou02.htm

 [4] インド思想史略説
     http://lapc01.ippan.numazu-ct.ac.jp/b/end.htm

 [5] 映画瓦版
   http://www.eiga-kawaraban.com/

 【参考文献】
 {1} 「神話のイメージ」(J・キャンベル/大修館書店)

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■□■ [僕の映画観]
□ □
■□■                        れい

  初めましてれいです。
 
  最近どんどん世の中が複雑だと感じる今日この頃だったりします。
 ひねくれモノの僕にとって、納得出来ないコト、良くわからないコ
 トが多い世の中だったんですが、だんだんそれに慣れて来た自分が
 居ます。理由が判りにくいコトが周りには溢れてその理由を判らな
 くても、「ま、いいや」って思っていることが多いと思います。そ
 んな自分に活!?を入れる意味もあり、「意味不明?」って思ったり、
 「なんで!」って思ったコトをこれから書いて行きたいと思います。
 
  最初は自己紹介という事で映画の話を書きます。映画は不条理な
 世界。それはイメージを人に伝えるという目的の為、「おいおいそ
 れはなんだかおかしいだろう!?」ってコトがいっぱいあります。で
 も!初回はそれは、ちょぃと置いておいて、素直に僕の映画が好き
 な所を書いて見たいと思います。
 
  僕は映画が好きです。なぜ好きなのか?って聞かれると・・・
 「映画の中には人が見た人が、そして世界が、生きて、いるから。」
 
  人間が生きるという事を客観的に疑似体験するコトが出来る、自
 分が経験出来ないコトや仮想の状況で、人の心を客観的に見て感じ
 るコトが出来るから。そして、その主人公の目線や、作り手の目線、
 それを作り出している心を映像で感じるコトが出来るから、まるで
 生きている様に感じるその世界が好きなんです。
 
  映画を見る度に、僕は旅に出ているようなそんな気持ちを受けま
 す。見ている間のほんのひと時。僕は主人公の目線で、作り手の目
 線で旅に出ます。そこには今まで感じた事の無い世界や、見た事の
 無い目線が広がっています。そして一緒にドキドキするその感じが
 とても好きです。
 
  良い映画は世の中に一杯あるんで、全てをあげるコトは出来ない
 ですが、まるで自分がその場に居るような視点で撮られた映画や、
 今まで感じた事の無い視点で撮られた映画が特に好きです。まるで
 その世界の中に本当に自分が居るかのような一体感が好きなんだろ
 うって思います。
 
  最近は映画を撮る技術がどんどん進化して来て、ホントに映像が
 凄くて、どの映画もそんな視点で感じるコトが容易くなって着まし
 た。ちょっと前の映画はその部分は想像力で補う必要があったんで
 すけどね。
 
  今回は映画について、僕にとっての映画とは、を書いて見ました。
 もし「ああ、そんならこんな映画がいいよ!」とかお勧めがあった
 ら是非、メール下さい。
 
  それでは。また。
                  rayblade5@mail.goo.ne.jp

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■□■ [不思議な夜のアイスエイジ]
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■□■                       なお
 
  昔は、どんなに感動しても惹きつけられるものでも、一度観たら
 満足でした。でも最近は、自分の好きなものは何度も観るようにな
 りました。一度目ならではの衝撃や感動も良いけれど、反芻するこ
 とによってわかっていく深さ、面白さもいいものですね。そして、
 大分前に観た映画を再び観るとき、内容を楽しむことだけでなく、
 前にそれを観たときの自分の心境や自分が置かれていた状況が自然
 と思い出され、映画そのものとは全く関係のない感慨を味わうこと
 も楽しくて、そういう意味でも映画は私にとって貴重なものです。
 
  つい先日、友人の子供(3歳の女の子)を一泊預かりました。私
 は幼稚園の仕事や、ベビーシッターをしていたこともあり、子供は
 大好きです。よく知っているその女の子を預かるのに抵抗はなかっ
 たのですが、さすがに一泊となると大変でした。当然ですが、お母
 さんのいない夜はすごく淋しいですものね。抱きながらあやしてい
 ると私にも悲しさが伝わってきて、一緒に涙が出ました。
 
  そのときに、子どもの気を紛らわすために観た映画が「アイスエ
 イジ」。このベビーシッターをしないと観ることはなかったかもし
 れないこの映画を、私はすごく好きになりました。これは、氷河期
 の地球を舞台にした動物たちの心温まるCGアニメです。上映されて
 いたときは、色んな批評が耳に入り、中でも良くないことが耳につ
 き、見る機会がないままでした。
 
  しかし、今回この『深夜、3歳の子どもとふたりきり』という特
 殊なシチュエーションで観たことが私の観る目を変えたのか、それ
 とも本当に私にしっくりきたのか、厳しい批評の目が閉ざされ素直
 に爽やかさを感じることができました。
 
 『生き方、環境、価値観、すべてにおいて共通点のない動物たちが
 一緒に旅をする。だんだん仲間になっていく。友情が芽生える。』
 
  ありがちで、ひねりはないものの安心して見ることができ、素直
 に温かい気持ちになれました。ところどころに出てくる小技。私は
 こういったものが大好きです。うれしくなります。そして、表情。
 心に残っているのは、言葉のないときの表情です。悲し気な表情、
 心配しているときの表情。こんなにも表情で気持ちを表現できたら
 すばらしいなと素直に思ってしまいました。(アニメなのに・・・
 影響を受けやすい私です)
 
  隣で一緒に観ていた子どもの視線(3歳児)で観ると、遊園地の
 アトラクションを思い起こさせる、氷の上を滑るシーンがすごく楽
 しいようです。モンスターズ・インクでいうと、流れていく沢山の
 ドアのうちのひとつに?つかまって流されるシーンでしょうか。
 
  私が観て好きになったポイントはこの子とは違うけれど、特殊な
 空間を共にしているありえない私たち2人組が、それぞれ違った視
 点で1つの作品を楽しんでいるその不思議な空気が、とても心地の
 よいものでした。おかげさまで、観終わった後私たちを包む空気は、
 さっきまでとはうって変わった温かさ、安心感に溢れたものでした。
 
  観るときの心境や状況と、映画の内容が一致したとき、映画って
 すごい力を発揮するものです。作品の良し悪しだけで映画を評価で
 きるものではないと、今回実感しました。
 
  そして、この映画もまた私が再び観たとき、きっと大変で楽しか
 った初の一日ママになったこの日のこと、そしてすごくかわいかっ
 た3歳のあの子のことを思い出すのでしょうね。
 
  さて、いよいよメルマガが始まりました。好奇心旺盛、おもしろ
 そうなこと大好きな私は、二つ返事で参加しましたが、期待半分、
 実は不安いっぱいです。それは、私がこの三人の中でもっとも不協
 和音を生み出す音となるだろうということ。私は感性でしか文章を
 書けないと思います。

  今このときに感じたこととは、何ヶ月、何年後には違ってくるで
 しょう。多くの方の反感を買うこともあるかと思います。なにしろ
 私の感性ですから・・・。(理知的ではありません)

  でも、自分の文章を会ったことのない沢山の方々に読んでもらう
 ということ、ご意見なんていただいたらとっても嬉しいでしょうね。
 初めての取り組みにわくわくしています!
 
  不協和音が、回を重ねるごとに心地よいものとなることを願って
 ・・・

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来月のテーマ:
          [ これはヘンだぞ!?]
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■□◆ [編集後記]
□ □
■□■                        あがた

  ながい準備期間をへて、ようやく無事に、創刊号を発行すること
 ができました。けっこうな文章量のメルマガになりましたが、いか 
 がだったでしょうか?

  創刊にあわせて、このメルマガ専用の掲示板をつくりました。読 
 んでいただいた感想、意見、タレコミ情報などなど、なんでも結構
 ですので、ぜひ気軽に書き込みしてください。メルマガと連動して、
 この掲示板が読者の皆さんの交流の場にしてゆきませんか?

  → http://www1.plala.or.jp/agata/synaphai/mokuji.html

  とつぜんですが、最近知った面白い話をひとつ。今年にはいって
 から、なぜかアラビア語の勉強を独学でやっているんですが、アラ
 ビア語ではくしゃみをした人は、したあとすぐ「アルハムドゥ・リッ
 ラー(アッラーを讃えましょう)」と言うそうです。しかもこれ、
 ただのどうでもいいような話ではなく、イスラム教徒にとってはコー
 ランの次に重要な書物であるハディースに、きちんと「そうしなさ
 い」と書いてあるそうな。それにしてもなぜ、くしゃみをしたらアッ
 ラーを讃えなきゃいけないのか???

  あるイスラム法学者が、こんな解釈をしていました。「くしゃみ
 をしたときの顔のまま元にもどらないと大変なことだけど、幸いに
 して元の顔にもどれましたよね、だからそのことを神様に感謝しな
 ければ!」

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 ○シナファイ 〜3つの視点から〜

 配 信 日:2003年7月28日(毎月第4月曜に配信)
 編 集 長:あがた
 発 行 ID:0000113431
 配    信:まぐまぐ http://www.mag2.com
 H P     :http://www1.plala.or.jp/agata
 e-mail :aga@blue.plala.or.jp
 登録解除:上記アドレスで可能(配信先変更は登録解除後、
      新アドレスで再登録してください)
 創    刊:2003年7月28日創刊

 ★感想、質問、意見、苦情…お待ちしています!
   → http://www1.plala.or.jp/agata/synaphai/mokuji.html

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        *各コラムの著作権は、それぞれの著者に属します。