■□◆ [ちょぃと斜め読み vol.012] 
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■□■ 01/8/22
                                 http://www1.plala.or.jp/agata
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 毎日、ニュースや新聞などをみていて「おや?」と思うことがよくあり
ます。そんな、「おやっ??」という記事をとりあげて、時事問題から軟
派なネタまで、幅広く、かつ鋭く読み解くコラム「ちょぃと斜め読み」。
批判・反論も大歓迎!
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■□■ 靖国神社問題とは何か
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■□■ [(1) 政教分離原則との関連について]

 小泉総理の靖国神社参拝に関して、さまざまな報道が繰り広げられてい
る。一部の保守系のメディアは15日に参拝しなかったことを取り上げ、
「本当の「政(まつりごと)」へ好機逸した」[1]、「日本はいまだに独立
国家になり得ていない」[2]、などと、理性ではなく感情に訴えかけるよ
うな評論し、対する多くのメディア「首相の靖国参拝には多くの問題があ
る」として問題点を指摘するに止めたり、あるいは一歩踏み出して社説で
反対を訴えている[3]。
 これだけ各種論説が入り乱れた状況では、なによりもまず論点を整理す
ることが重要だと思う。そこで今回は複雑に絡んだ靖国神社問題を、わか
りやすいように整理してみたい。
 私のみるところ、靖国参拝問題は、大きく分けて次の3点に収束する。

 1. 憲法の政教分離原則に関わる、法的問題
 2. A級戦犯を参拝することに対する、(狭義の)倫理的問題
 3. 日本政府としての歴史認識に関する、(広義の)倫理的問題
 4. その他、冷徹な損得勘定と政治的判断に関する問題

1〜3番目の項目は「どのような判断が正しいか」に関する問題である
のに対して、4番目の項目は「どのような判断をすれば自分たちの利益
を最大にできるか」という冷徹な政治判断に関する問題であるため以下、
1〜3の順番に、複雑に絡まった靖国論争を解きほぐしてゆくことにす
る。

 公務員の靖国参拝問題については、これまでにさまざまな判例の積み
重ねがある。一般的に「玉串料訴訟」と呼ばれる訴訟についてである。

 いくつかの地方自治体は、靖国神社や護国神社に公費から玉串料など
を支払っていた。その公費支出が憲法の政教分離原則に違反するのでは
ないか、と岩手県や愛媛県で訴訟が提起された。地裁や高裁では意見が
分かれていたが、1996年4月2日、最高裁が、愛媛県知事の公費による
玉串料支出は憲法に反するという判決を出して、大きな話題になった。
その判決の中で、最高裁は以下のような判断を下した。

|明治維新以降国家と神道が、密接に結び付き種々の弊害を生じたこと
|にかんがみ政教分離規定を設けるに至ったなど(中略)憲法制定の経
|緯に照らせば、たとえ相当数の者がそれを望んでいるとしても、その
|ことのゆえに、地方公共団体と特定の宗教とのかかわり合いが、相当
|とされる限度をこえないものとして憲法上許されることになるとはい
|えない

 首相の靖国神社公式参拝や同神社への公費支出については、これまで
に岩手、九州、大阪の3ヶ所で訴訟が起こされたものの、いずれも原告
請求は棄却されている。しかしながら例えば1985年の中曽根康弘首相
(当時)の公式参拝をめぐり、遺族などが「宗教的人格権を侵害された」
と国や首相に損害賠償を求めた大阪、九州靖国訴訟(1992年)では、
「(首相の公式参拝は)宗教的活動に当たる疑いが強く、違憲の疑いが
ある」「靖国神社に援助、助長などの効果をもたらすことなく首相が公
式参拝を制度的に継続して行えるかは疑問」とし「違憲の疑い」を示し
た。

 これに関して憲法学者の奥平康弘・東大名誉教授は、共同通信社の取
材に対して以下のように述べている。

|訴訟の形式から入り口で棄却されているが、真正面から公式参拝自体
|を問題にすれば、違憲という厳しい判断にならざるを得ない
|(8/13 共同通信)

 つまり、これまでの判例からみると、首相の靖国参拝については、公
式参拝であれば政教分離原則に反し、違憲の可能性大であるのに対して、
私的な参拝であれば違憲かどうかは不明、ということになるだろう。

 ちょっと余談になるが、産経新聞の政治部長である外山衆司氏は、解
説記事のなかでこの件に関して、

|首相の参拝が憲法二〇条の政教分離規定に抵触するという指摘は、最
|高裁判例などによりすでにクリアされている。(中略)本来、国に身
|命をささげた人々をどういう形式で祭り、どう拝するかは純粋に国家
|と国民の固有の問題である。(8/14 産経新聞)

などと平気で述べているが、ちょっとでも判例を調べたことのある人で
あれば、こんなデタラメは決して書けないはずである。新聞社の政治部
長であれば、記事を書くまえにもうちょっと勉強してもらいたい(しか
も彼は編集局次長でもあるというから驚きだ)。

 次に問題になるのは、それでは小泉首相の靖国参拝は公的参拝であっ
たか私的な参拝であったかという点である。小泉首相は公的か私的かに
ついて明言しなかったが、靖国神社では「内閣総理大臣 小泉純一郎」
と記帳し、参拝後も「内閣総理大臣、小泉純一郎として参拝した」と繰
り返し明言していることから、公式参拝の色合いが非常に強い。

 しかしながら、「公的」か「私的」かを区別することは困難であるし、
小泉総理自身も「神道形式にこだわらないで心を込めて参拝する。公式
なのか私的なのかとかそういう質問は無意味だ」(7/26)と述べている。
実際、あの靖国報道にウンザリした多くの人々も「そういう質問は無意
味だ」と感じているのではないだろうか。

 実は私もそう思っていたのだが、調べてみるとこれが実に巧妙な言い
回しであることが分かってきた。というのも、実は政府見解では「本人
が『公式参拝』と言わない限り公式ではない」(7/26 福田康夫官房長官)
という仕組みになっているからである。つまり、いくら「内閣総理大臣」
と記帳しようと、公式参拝か私的な参拝かを本人があいまいにし続ける
限り、法律問題を巧みにすり抜けることができるのである。

 以上をまとめると、

 1. 首相の靖国参拝と政教分離原則の関係については、首相自身が「公
  式参拝」と認めた時点で、その参拝は違憲の可能性大
 2. 「私的な参拝」あるいは「質問自体が無意味」だと言い続ければ、
  違憲かどうかは、これまでの判例から見て不明

ということになるだろう。

 間違っても「最高裁判例などによりすでにクリア」などされていないのだ。

[1] 産経新聞8/14付解説記事
[2] 8/19 フジテレビ「報道2001」
[3] 一例を挙げるならば、8/14 読売新聞(問題点の指摘)や、同日の朝日新
  聞(参拝反対論の展開)など。


【靖国神社問題とは何か】
 今後の予定
  (2) 靖国参拝の倫理的問題について

【参考HP】

 産経新聞8/14付解説記事
      http://www.sankei.co.jp/databox/paper/0108/14/paper/today/
                                                itimen/14iti003.htm
 共同通信
   http://www.kyodo.co.jp/

 最高裁判所HP
   http://www.courts.go.jp/

 国会議事録検索システム
   http://kokkai.ndl.go.jp/

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■□■ [編集後記]

 最近、「ランチョ・ドローム」という映画を見ました。インドからトル
コを抜けてヨーロッパ各地に移ったロマ人(ジプシー)たちのルーツを追っ
て、各国に残るロマ人の伝統音楽を記録した半ドキュメンタリー映画です。

 インド、トルコ、エジプト、東欧、スペイン・・・

 ワールドミュージックが好きな私にとっては、だいたいどれも聞いたこ
とのあるようなメロディーでしたが、いざ、こうして連続して一度に聞い
てみると、なるほど確かに共通して流れる「ロマ人のリズム」というよう
なものがあることが一見(一聴??)して知ることができました。

 あまり知られていない映画ですが、歌や音楽はもちろん、映像もきれい
で、邦楽や洋楽にそろそろ飽きた方にはちょうどおすすめですよ!

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 発行時期 :  隔週(毎月第2・第4水曜日)
 発行者  :  あがた あきら
 発行ID  :  まぐまぐ(0000054104)
 配信     :  まぐまぐ http://www.magmag.co.jp/ 
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