■□◆ [ちょぃと斜め読み vol.007] 
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■□■ 01/3/28
             http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Namiki/7807/
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 毎日、ニュースや新聞などをみていて「おや?」と思うことがよくあり
ます。そんな、「おやっ??」という記事をとりあげて、時事問題から軟
派なネタまで、幅広く、かつ鋭く読み解くコラム「ちょぃと斜め読み」。
批判・反論も大歓迎!
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■□■ シリーズ・「田中角栄の真実」批判
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■□■ [(3) 嘱託尋問調書をめぐる問題・1 ]

 このシリーズ1回目で述べたように、ロッキード事件の発端は、76年に開か
れたアメリカのチャーチ委員会におけるコーチャン(ロ社副会長・肩書きはす
べて当時)証言だった。その後、アメリカ側から入手した資料などをもとに、
日本の捜査当局は同年4月、アメリカに検察官を派遣してコーチャンと接触し、
任意の取り調べに応じるよう説得をおこなった。しかしコーチャンはこれを拒
否。これを受けて検察側は、アメリカにいる証人が任意の取り調べに応じない
以上、刑訴法226条により、証人尋問をアメリカの司法当局に嘱託しておこな
う方針を決める。こうして得られたコーチャンおよびクラッター(ロ社東京事
務所代表)の尋問調書が、嘱託尋問調書と呼ばれるものである。

 ここで法律問題について述べると、まず刑訴法226条では「犯罪の捜査に欠
くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第二二三条第一項
の規定による取り調べ(筆者注:任意取り調べ)に対して、出頭又は供述を拒
んだ場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人
尋問を請求することができる」と明記されている。つまりわかりやすくいえば、
出頭を拒否された参考人からの供述が重要である場合には、任意の出頭しか要
請でききない検察官が、捜査の一環として、強制力を持つ裁判官に参考人の尋
問を依頼(証人尋問手続き)することができる、ということである。

 ところがロ事件の場合、その尋問をおこなう際にコーチャンおよびクラッター
が証言と引き替えに免責を求め、検察庁がこれを承諾したことが大きな問題と
なった。日本の法律には免責規定がないため、このようにして得られた証言は
証拠として認められないのではないか、というのである。この点については裁
判でもさんざん争われ、一審判決では証拠能力ありと判断されたが、最高裁で
はそれが否定された。

 しかし木村氏は、捜査の過程で嘱託尋問調書を作成すること自体を「違法捜
査」と決めつけたうえ、

|本来このような違法捜査をチェックすべき責務を負う裁判所までがこれを怠っ
|たのであるから、田中元総理有罪に向けてエキサイトしていた当時の世論に
|影響され、裁判所までがオーバーヒートし、冷静な判断力を失ってしまって
|いたのではないかと言わざるを得ない(中略)
|(最高裁)判決の中で大野裁判官の補足意見は、「本件においては、証人
|尋問を嘱託した当初から被告人、弁護人の反対尋問の機会を一切否定する結
|果となることが予測されていたのであるから、そのような嘱託証人尋問手続
|きによって得られた供述を事実認定の証拠とすることは、伝聞証拠禁止の例
|外規定に該当するか否か以前の問題であって、刑訴法一条の精神に反する。」 
|と述べている。(18 - 19ページ)

 と、まるで鬼の首でも取ったかのように述べている。しかしこれは読者の多
くが裁判で用いられる用語について詳しく知らないことにつけ込んだ、トンデ
モナイ詭弁である。ここで木村氏は、刑訴法で規定される「証拠」という言葉
の意味するところが、世間一般での意味とは違うという重要な事実を、意図的
に知らないフリをすることによって、まるでこの尋問調書が違法な手段によっ
て得られたという印象を読者に与えようとしているのだ。

 具体的に見ていこう。まず、そもそも刑訴法というのは、裁判プロセスだけ
でなく、犯人の捜査・訴追から刑の執行までの法的ルールを定めた法律のこと
である。この法律において「証拠」という語は、裁判官が有罪・無罪を判断す
るための材料として法廷で吟味するものを指す。つまり簡単に言えば、ミソも
クソもいっしょくたにして何でもかんでも証拠として法廷に持ち込まれたので
はたまったものではないので、法廷で「証拠」として取り上げるためには最低
限これだけの要件を満たしなさい、という基準が刑訴法によって規定されてい
るのだ(もちろんこれだけではないが)。このうち、ここで問題となる「被告
人以外の者の供述書」が証拠として法廷で取り上げられるための要件は、第321
条1項の1-3号に詳しく記されている。簡単に紹介すると、以下のようになっ
ている。

1号:裁判官の面前における供述を録取した書面(裁判官面前調書)
2号:検察官の面前における供述を録取した書面(検察官面前調書)
3号:それ以外の、供述が特に信用される状況でおこなわれたもの(特信状況)

 また、おなじ人物による供述で内容がくいちがう場合には、3号よりも2号、
2号よりも1号で規定される書面のほうが証拠として採用される。つまり、たと
えば証人が法廷で、「検察官の調書はウソです、脅されてウソをしゃべってし
まったんです、事実はこれこれこういうことです」と述べた場合は、検察官面
前調書ではなく法廷での供述が証拠として採用される。

 さて、ここまでの議論をふまえて、再度、木村氏が引用している最高裁の補
足意見を読んでみてほしい。「嘱託証人尋問手続きによって得られた供述を事
実認定の証拠とすることは(中略)刑訴法一条の精神に反する」の部分である。
もう分かっていただけたと思うが、ここで最高裁判決が言っているのは「嘱託
尋問手続きは刑訴法の精神に反する」といことではない。判決が述べているの
は、「この手続きによって得られた供述を、裁判所において事実判定の材料
(証拠)とすることはできない」という、ただそれだけのことなのだ。

 そもそも最高裁判決の補足意見には、木村氏が引用をストップしているすぐ
後ろの部分にこう書かれているのだ。

|しかし、捜査の端緒ないし捜査資料の収集として嘱託尋問調書をし得るとい
|うことと、その結果得られた資料を我が国の刑事裁判上、事実認定の証拠と
|することができるということとは別個の問題である(同上)

 嘱託尋問手続きは、捜査資料の収集の一環として行うことは可能だが、それ
を法廷で証拠採用するかどうかは別の問題だとハッキリ述べているこの部分を、
木村氏は意図的に隠して、読者に誤った印象を与えようとしているとしか思え
ない。(以下次号)

【シリーズ・「田中角栄の真実」批判】
 今後の予定
    (4) 嘱託尋問調書をめぐる問題・2
  (5) 清水ノートというアリバイ
  (6) ロッキード裁判とは何だったのか

【参考HP】

 岩見隆夫氏のコラム
   http://www.mainichi.co.jp/eye/iwami/sunday/2000/1008.html

 「田中角栄の真実」の紹介
   http://www.koubundou.co.jp/books/pages/kbn7618.html

 最高裁判所HP
   http://www.courts.go.jp/

 国会議事録検索システム
   http://kokkai.ndl.go.jp/

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■□■ [編集後記]

 3/29号の週刊文春の新聞広告を見て、おもわず「なんじゃこりゃ!?」とお
もったのは僕だけだろうか?「超法規的日本再建計画」と銘打って各界の識者
と呼ばれる人たちがいろいろと書いているんだけど、そのタイトルが可笑しい。

「借金を帳消しにし、総理大臣と財務大臣は切腹」(立花隆)
  -- 立花さん、最近メチャクチャな発言が多くなったなぁ。

「野中広務を総理にして北朝鮮疑惑を問い質そう」(櫻井よしこ)
  -- 最近の月刊誌「世界」、ちゃんと読んでから言ってるの??

「団塊の世代よ再び安田講堂に立て籠もろう」(森永卓郎)
  -- 立て籠もってから、何をどうするんだ??

「漢字で日本独自のIT開発を」(坂村健)
  -- 日本でしか通用しないIT開発って何の役にたつんだろう?

「人間は放っておくと野獣化する」(山折哲朗)
  -- それでホントに仏教学者??

「まずオレの借金二億円棒引きしてよ」(橋本治)
  -- ナンノコッチャ

 うーん、これじゃ、自民党のCMではないけど
「こんなんじゃ、こんなんじゃぁ、、私が評論家になったほうがマシよーッ!」
なんて、ホントに言いたくなってしまうなぁ。

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 発行時期 :  隔週(毎月第2・第4水曜日)
 発行者  :  あがた あきら
 発行ID  :  まぐまぐ(0000054104)
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