[番外編]

かってにアラビア語FAQ
 

 ここでは、私が独学でアラビア語をやりながら思ったことを、まじめなことからどうでもいい内容まで、ゴチャ混ぜにして書いてみました。何かの参考になれば幸いです。

 Q1

アラビア語って何ですか?

アラビア語は、中東の21ヶ国で使われている言語で、国連機関で使われている6つの公用語のうちの1つです(その他は、英語、スペイン語、ロシア語、フランス語、中国語の5つ)。また、3大宗教のひとつであるイスラム教の聖典「コーラン(正確にはクルアーンと発音)」が書かれた言葉でもあることから、社会的にも学問的にも非常に重要な言語のひとつです。

 Q2  "フスハー" と "アーンミーヤ" って何ですか?

ひとくちに日本語といっても、そのなかには標準語のほかに関西弁や東北弁や琉球弁など、いろんな方言があるように、アラビア語にも、中東の21ヶ国で共通に使われている標準語と、地方によってそれぞれ異なる方言とがあります。この、標準語としてどこでも通じる共通語が「フスハー」、地方によってそれぞれ異なる方言が「アーンミーヤ」と呼ばれるものです。

では具体的にはどういうふうに使われているかというと、新聞やニュース番組や演説のような、フォーマルな場所ではフスハーが使われていて、普通の会話やくだけたテレビドラマや映画のなかではアーンミーヤが使われています。

さて、アーンミーヤのなかには、エジプト方言、シリア方言、サウジ方言、モロッコ方言などなど、いろいろとあり、しかも厄介なことにそれぞれがかなり違っているため、フスハーさえ知っていればアーンミーヤもなんとなく理解できる、、、といったシロモノではないようです。実際、フスハーを猛勉強して、現地の新聞やニュースも9割がた理解できるレベルにまでなった人でも、アーンミーヤの会話は2割程度しか理解できないそうです。

そんなわけで、いくらアラビア語のネイティブスピーカーでも、基本的には異なる地域のアーンミーヤは彼/彼女にとっては外国語なのですが、エジプトのアーンミーヤに限っては、第2の共通語といってもいいくらい中東諸国に浸透しているそうです。その理由は、エジプトのテレビドラマや映画や音楽が、他の中東各国でも人気があるからだとか。このことから、フスハーとエジプト方言のアーンミーヤとの関係を、日本語の標準語と関西弁とに例える人もいます。エジプト人が、"ヌクタ" と呼ばれる笑い話でまわりの人を笑わせるのが好きだというあたりも、関西人とどこか通じるところがあるのかもしれませんね。

 Q3  イランやパキスタンも、アラビア語を使ってるのですか?

たしかにイランやパキスタン、アフガニスタンあたりでも、アラビア語らしい "くねくね文字" を使っていますが、残念ながらこれらはアラビア語ではありません。それぞれ、イランはペルシャ語、パキスタンはウルドゥー語、アフガニスタンはダリ語とよばれていて、アラビア語とは別の言語です。ただし文字はアラビア語の文字とほとんど同じものを使っているために、ちょっと見ただけでは同じに見えてしまいます。

 Q4  アラビア語を勉強すると、なんかいいことありますか?

もしあなたが、お金持ちになりたいとか、いい会社に入りたいとか、女の子にモテたいとかいうなら、アラビア語なんかさっさとやめて、英語かフランス語をがんばったほうが、実現の可能性は高いでしょう(あくまで相対的に、ですが・・・笑)。ならばアラビア語をやるメリットって何?、と言われると、やっぱり言葉を通してアラブ世界をよりよく知ることができる、これに尽きます。私のホームページでもいくつか紹介していますが、アラブの諺やアラビア語独特の言い回しなんかには、けっこうイキな表現が多くて、本当に魅力的ですよ!そんなわけで、アラビア語を学ぶことに世俗的な「ご利益」は、あまり(というか、ほとんど...)ありませんが、アラブ世界にちょっとでも関心のある人にとっては、好奇心を満たしてくれるという「ご利益」だけは、十分すぎるくらいあります。

 Q5  アラビア語を独習するうえで、まず苦労する点って、何ですか?

なによりもまず、あのミミズの這ったような文字に苦しめられます。しかもさらに具合の悪いことに、アラビア語は右から左に書きますから、左から右に書くことに慣れた私たちにとっては厄介なこと極まりなしです。しかしアラビア語の文字がいくら難しいといっても、しょせんは28文字しかありません。平仮名とカタカナだけで100近くもある、外国人にとっては超難解な日本語を、私たちは自由にあやつってるんですから、28文字を覚えることなんて、チョロイもんです-------相対的には。。。 あと、アラビア語は基本的に表音文字ですから、それぞれの文字と母音符号(Q6参照)さえ覚えれば、初めての単語でも発音できますし、逆に初めて耳にする単語でも文字で書くことができます。このあたり、発音と表記にズレがある英語(たとえば、"al" という綴りは、"all" という単語ではオーと発音しますが、"palm" ではアーと発音する、などなど)とくらべて習得しやすいとも言えます。

私がはじめてアラビア文字を覚えるときに効果的だったのは、もうとにかく自分で書いてみることでした。はじめてアラビア語に触れたのは、NHKラジオのアラビア語講座だったのですが、まずはこのアラビア語講座のテキストにある書き方のコーナーで空欄をうめることからはじめました。そして、ウロ覚え程度まで覚えたころに、テキストの文章を一文づつ書き写して練習すると、それから1週間目くらいから面白いようにメキメキとアラビア文字を覚えることができて、文字の読み書きができるまで、ほんの1ヶ月くらいでした。NHKテキストのスキットを1冊まるまる書き写すくらいの気持ちでやれば、すぐに覚えられますよ!

 Q6  アラビア語を独習するうえで、次に苦労する点って、何ですか?

文字の読み書きを覚えたあと、次に苦しめられるのが動詞の活用です。これはもう、はっきりと断言できます。相当に苦しみます(笑)。動詞の基本形のほかに、派生系と呼ばれる形が10種類以上もあることも悩みのタネですが、それ以上に困らされるのがモーレツな活用の数!これはもうウンザリしてくるほど派手に活用してくれます。まず1人称、2人称、3人称で活用形がちがううえに、1人称以外は対象が男(又は男性名詞)か女(又は女性名詞)かによって活用が違います。ここまではまぁよくあるのですが、アラビア語が人泣かせなのはここから。なんと人称ごとに、それぞれ単数か双数(2)か複数(>2)かによって、さらに活用するのです。で、完了形(=英語でいう過去形に相当)と未完了形(=現在形と未来形に相当)と命令形と受動形の別でまた活用して、、、、てな感じで、単純計算すると一つの動詞が(3+2)×3×4=60通りに活用するという、なかなか無茶苦茶な言語といえます(実際は受動形はほとんど使われなかったり同じ活用形があったりで、ざっくり30通りくらいでしょうか。それでも相当にブッ飛んだ数ですが・・・)。

 Q7  アザーンって、何ですか?

イスラム教では、1日5回の礼拝が決められています。イスラム教国を訪れると、それぞれの礼拝時間に、市内のモスクから一斉に礼拝への呼びかけがおこなわれます。これがアザーンです。昔はモスクの塔の上に人が登って、遠くまでとどく独特の声音でアザーンをおこなっていたそうですが(そういえばNHKスペシャルの「シルクロード」シリーズの1場面に、実際に人が登ってアザーンをするシーンがありました)、最近ではどこの国でも、モスクの上に備え付けられたスピーカーから流されるのが一般的のようです。

ちなみにアザーンを朗詠する人のことを、アラビア語ではムワッズィン(مُؤَزِّنٌ)といいます。

 Q8  在日イラン人の方が、石焼きイモのメロディーがアザーンに聞こえるっていってたけど、ホント??

一見ウソのようですが、どうやらホントのようです。よく聞くと、あの独特の声音のせいだけでなく、スピーカーの音が微妙に割れているあたりも、一役買ってるのかもしれません・・・笑。

とはいうものの、やっぱり外国で暮らす寂しさと、故郷を思う気持ちからそう聞こえてしまう、というのがホントのところではないでしょうか。

 Q9  Windows98でアラビア語を使うにはどうすればいいですか?

聞くところによると、Windows2000やXPはFont選択をすることで、簡単にアラビア語入力モードにすることができるらしいですが、私が使っているWindows98ではそんな選択項目もなく、アラビア語入力はできないと思ってました(ユニコードを直接入力するという荒ワザを使うとうテもありますが・・・)。ところがマイクロソフトのホームページからあるファイルをダウンロードすることで、Windows98でもバリバリとアラビア語を入力するこという話を耳にしました。

論より証拠!まずは↓のURLを開いてみてください。内容がアラビア語でわかりづらいですが、"Windows98ナンタラカンタラ" と書いてある行のところをクリックすると、ファイルのダウンロードがはじまります(下図の矢印のところ)。

http://office.microsoft.com/arabicregion/Downloads/2000/arafonts.aspx

で、ダウンロードしたファイルを開いてセットアップをすると、Wordでアラビア語の文書を書いたり、Googleのアラビア語ページからアラビア語の単語でインターネット検索をしたりと、いろんなことができます。ぜひ、おためしあれ!

 Q10  コーランは翻訳が禁止されてるってホント?

ときどきこんな話を耳にしますが、これは間違いで禁止されているわけではありません。実際、英語にも翻訳がありますし、日本語訳も岩波文庫などから出版されています(Web上にも日本語訳があります)。ではどこからこんなウワサが出てきたのかというと、これは推測ですが、「コーランは他の言語に翻訳された瞬間に、その聖性が失われ、聖典ではなくなる」というのが、めぐりめぐって、いつのまにか「翻訳が禁止されているらしい」、というような話になってしまったのではないでしょうか。実際、コーランは預言者ムハンマド(モハメット)が大天使ガブリエルから聞いた神の言葉を、一字一句そのまま書きとったものだとされているため、たとえアラビア語を母国語としない人であっても、イスラム教徒であればコーランをアラビア語のまま読むことが求められているのです。

さて、私自身はイスラム教徒ではありませんが、あのコーランの美しい響きを耳にすれば、たしかにこれを他の言語に翻訳すると聖性が失われるというのも納得できるような気がしました。皆さんもぜひ、機会があればコーランの美しい響きを味わって見てください!

 Q11  "ハーザー" の謎

"ハーザー" という単語はどう書くのか??

こんな基本的なことで、しばらく悩まされたことがありました。理由は、テキストによって、書き方がちがっていたからです。下の表にまとめてみましたが、ごらんのようにおなじ単語なのに、3通りもの書き方がされていたのです。いったいどれが正しいのか、悩まされました。

表記 掲載書
هٰذَا CDエクスプレス・アラビア語(白水社/奴田原睦明ほか著)

こうすれば話せる・アラビア語(朝日出版社/奴田原睦明ほか著)

هَٰذَا NHKラジオ・アラビア語入門(講師:本田孝一)
هَذَا はじめてのアラビア語(講談社/宮本雅行著)

それからしばらくして、英語で書かれたアラビア語の代表的な教科書である "Standard Arabic -An elementary intermediate course-" (Schulz, Krahl Reuschel著) を読んで、謎がいっぺんに解けました。この本のなかではハーザーは هَذَا と書かれていたのですが、その下にはこんなことが書いてあったのです。

هٰذَاという表記法もある。しかし現代アラビア語ではあまり使われていない」

というわけで、هَٰذَاというのは誤記(実際、本田氏の他の著書ではهٰذَاとなっています)で、هَذَاと書くのが正解のようです(女性名詞を指す「ハーズィヒ」も同様)。

 

 Q12  「コーラン」の英語表記は、"Qul'an" or "Koran" どっち??

イスラム教の聖典といえば、もちろん「コーラン」。ところが、これまで知らなかったのですが、どうやらコーランの英訳書には、タイトルが、"Qur'an" となっているものと、"Koran" となっているものの2種類があるようです(たとえば、The Qur'an TranslationThe Koran )。

そんなコーランですが、もともとのアラビア語表記は " قُرْآنٌ " となっていますので、問題はقの文字を "Q" で表記するか "K" で表すか、ということになります。で、いろいろと例を見てみると、たとえば "اَلْعِرَاقُ " は "Iraq"、 "اَلْكُوَيْتُ " は "Kuwait" のように、كにはK、قはQ、で表記するのが一般的のようです。

というわけで、Koran ももしかしたら間違いではないのかもしれませんが、Qur'an のほうがより正確な表記ということになりそうです。

 

 


 

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