アラビア語には、それぞれの文字の母音をあらわすための、母音記号とよばれるものがあります。文字の上にある、短い斜め線や
"6" を斜めにしたような記号がそれです。
アラビア語の母音記号は、表2のとおりです。一例として、2番目のアルファベット(ب/バー)に母音符号をつけたときの例も、いっしょに示します。
表1-2 母音記号

「え、これだけ??」、と思われた方も多いのではないでしょうか。そう、ホントにこれだけ、たったの3つなんです。アラビア語は最も母音の数が少ない言語の一つなのです。
表1-3は、長母音と呼ばれるものです。といってもなんのことはない、ただ単に母音をのばすだけのこと。これもまた、右側にバーを使って例を示しておきました。
表1-3 長母音

表1-4は、2重母音と呼ばれるものです。これもまた同様に、バーを使った例もいっしょに示しておきます。
表1-4 2重母音

表1-5に、タンウィーンと呼ばれる記号を示します。これらは主に名詞や形容詞の格(主格、所有格、対格)を示すときに使われます。また、アーのタンウィーンのみ、アリフと同時に使われます。これまでと同様に、バーを使った例もいっしょに示しておきます。
表1-5 タンウィーン

最後にシャッダ記号とスクーン記号について。シャッダ記号は、その文字を2回繰り返すところを1文字で表していることを示し、スクーン記号はその文字を子音として発音することを示しています。

たとえば、このページにいちばん最初に示した
<アッサラーム・アライクム>
の場合、右から3文字目のスィーン(س)の文字にシャッダ記号がついてますね。これは、「この部分にスィーンが二文字あるところを一文字で表記しているんだぞ」、ということを示しています。さらにシャッダ記号の上には、この部分をアーと発音することを示す母音記号がついていますから、このスィーンの文字は
"ッサ"
と発音するわけです。また、いちばん最後のミーム(م)にはスクーンがついていますから、これは「マ」とか「ミ」とか「ム」と、母音つきで発音するのではなくて、"m"
の子音の音だけを弱く発音するわけです。

そのほかにもいくつか発音を決める記号がありますが、それはまた出てきたときに、追々説明することにします。
さてこの母音符号ですが、じつは一般的な文書、たとえば新聞や、テレビの字幕なんかには、これらは出てきません。日本語を習うときのことを思い出してみましょう。小学校のころの国語の教科書なんかには、難しい漢字にふり仮名がふってありましたよね。あれと同じように、アラビア語も初学者にとって読みやすいように、まずは母音記号がついたものから勉強をはじめるのです。ですからアラビア語圏でも、子供たちの読むものには母音記号がついていますが、大人が読むような文書には、これらはついていないというワケです。
しかしこれにはただ一つだけ例外があります。それはイスラム教の聖典、コーラン。
イスラム教では、たとえどこの国の人であっても、コーランを原語(=アラビア語)のまま読むことが望ましいとされているために、外国の人にも読みやすいように母音記号がふってあるというわけです。
ちなみに
<アッサラーム・アライクム>
の母音記号を取ると、こうなります。

やっぱりこのままでは読みにくいですよね。。。
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